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テンプレート:子記事 銀河英雄伝説の登場勢力(ぎんがえいゆうでんせつのとうじょうせいりょく)は、田中芳樹の小説、およびそれを原作としたアニメ『銀河英雄伝説』に登場する、架空の勢力の一覧である。

銀河帝国[]

500年近くにわたり支配を続ける専制国家。ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムにより建国されたゴールデンバウム王朝と、ラインハルト・フォン・ローエングラムにより成立したローエングラム王朝に区別される。物語の本編は、ゴールデンバウム王朝末期からローエングラム王朝創成期にかけた時代を舞台としている。

ゴールデンバウム朝銀河帝国[]

ゴールデンバウム朝銀河帝国は、初の全人類統一専制政体である。退廃した銀河連邦末期に登場した新進気鋭の軍人ルドルフ・フォン・ゴールデンバウムが政治家に転身し、その強力な指導力で民衆の圧倒的支持を集めて独裁者となる。宇宙暦310年、ルドルフが「神聖にして不可侵なる」銀河帝国皇帝に即位して銀河帝国は成立し、宇宙暦を廃して新たに帝国暦1年とした。首都はヴァルハラ星系惑星オーディン。当初は立憲君主制であったが、帝国議会の永久解散、「劣悪遺伝子排除法」にみられる徹底した弱者や反対者への強権弾圧が行われ、一方で功臣を中心に創設された貴族階級と軍・官僚の下で、初代のルドルフの治世において早くも強固な専制体制へと移行していった。しかし5世紀にもわたる強権的な支配は内部に腐敗を抱えるようになり、帝国からの脱出者により建国された自由惑星同盟との不毛な戦いが続くなかで、次第に国力は疲弊していく。やがてラインハルト・フォン・ローエングラムの台頭により、大貴族をはじめとする門閥貴族の支配体制が倒され、宇宙暦799年(帝国暦490年)、名目上は禅譲、実質的には簒奪という形でローエングラム王朝に取って代わられた。38代、490年の支配であった。因みにアニメ版ではルドルフの銅像が倒されている描写が見られる。

ローエングラム朝銀河帝国[]

ローエングラム朝銀河帝国は、宇宙暦799年(新帝国暦1年)に成立。首都は始めオーディンであったが、初代皇帝となったラインハルト・フォン・ローエングラムにより翌年フェザーンに遷都。ローエングラム王朝では前王朝の悪習を一掃した開明的な統治が行なわれ、また150年にわたる自由惑星同盟との抗争を終結させ人類社会のほぼ全てをその支配下に治めた。一応国号も「銀河帝国」を引き継いでいおり、皇帝を頂点とする政体であるが、ラインハルトの存命中は体制は専制であるが内実は軍事独裁の色彩が強い[1]。現にラインハルト自身が息子が帝国の支配権を継承する必要無しと述べている。ただしラインハルトは自分の死後の体制を構築せずに早逝し、帝位は息子であるアレク大公に、実質的政治権力は妻であるヒルデガルド皇妃に引き継がれた。その後の政体がどうなっていくかは述べられていない[2]。ただし後世の歴史家により、ヒルデガルド皇妃は「ローエングラム王朝の育ての母」とみなされており、少なくとも王朝は存続した様子である。

自由惑星同盟[]

ゴールデンバウム王朝銀河帝国の圧政に抵抗して、建国された民主主義国家。フリープラネッツとも呼ばれる。首都はバーラト星系第四惑星ハイネセン[3]
政体としては民主共和制である。各惑星に首相が存在する事から、連邦制であると思われる。ただし各惑星政府は固有の軍事力を持っておらず、「アルテミスの首飾り」の例に見られるように、首都星の防衛システムの充実が不平等であるとして問題視されている。
「最高評議会」が自由惑星同盟の最高機関であり、最高評議会議長は自由惑星同盟の元首とされる。評議員は行政庁の長たる委員長を兼ねており、これから最高評議会が内閣に相当し、しかも議会に対してより強い権限を持っているものと思われる。多数決システムを取っており、またその際の票数・各評議員の判断も公表されている(そのため最高評議会の失敗に対し、一応は全評議員が連帯責任を取って辞職しても、反対票を投じた者はかえって評価され、再度評議員に就任でき、事実上免責される)。この事から、いわゆる内閣の閣僚と違い与党だけで固めている訳ではなく、野党からも 評議員=委員長 を選出できるシステムになっていると類推され、それによって最高評議会の強大な権力に制限が加えられていると思われる。
ただし銀河帝国から侵攻を受けた際は、トリューニヒトは銀河帝国への降伏を独断で決定しており、非常時においては最高評議会議長には大権が与えられていると考えられる。
帝国暦164年、奴隷階級としてアルタイル星系において強制労働に就かされていたアーレ・ハイネセンらが、ドライアイスの塊で宇宙船を作って流刑地から脱出。「長征1万光年」と呼ばれる苦難の逃避行の末、居住可能な惑星を持つ安定した恒星群を見出し、復活させた宇宙暦527年(帝国暦218年)に建国された。建国から1世紀の間に国力の充実が図られ、宇宙暦640年(帝国暦331年)、ついにその存在が帝国に知られる事となるが、ダゴン星域会戦で帝国の遠征軍に記録的大勝。ダゴン会戦の後、帝国内の共和主義者が亡命するようになり、それを受け入れた同盟は量的な膨張をとげる。一方で、亡命者の中には刑事犯や権力闘争に敗れた貴族達も含まれており、質的な変容も余儀なくされた。
ダゴン会戦以後150年にも亘る慢性的な戦争状態の中で、政治の腐敗が進み、社会・経済は日常レベルでのインフラの維持にさえ支障をきたすほど衰弱していき、建国当初の精神は失われていった。宇宙暦796年(帝国暦487年)に重要戦略拠点であるイゼルローン要塞を帝国から奪取した後、政治的理由から実施された帝国領侵攻作戦の中で膨大な艦艇・将兵を失い軍事力も弱体化した。やがて救国軍事会議によるクーデターとその失敗を経て、トリューニヒト派が政界・軍部において幅を利かすようになり、ラインハルト・フォン・ローエングラムのもとで改革が進む銀河帝国と比べてむしろ全体主義的な統制国家となってしまう。銀河帝国の軍事力に対抗しうる才能を持った類い希な人材であるヤン・ウェンリーでさえ、民主的な主張を繰り返したため弾圧を受けたほどであった。
帝国(ラインハルト)による「ラグナロック作戦」及び「第2次ラグナロック作戦」の後、宇宙暦800年(新帝国暦2年)2月20日「冬バラ園の勅令」によってローエングラム朝銀河帝国に全面降伏し併呑された。ゴールデンバウム朝銀河帝国は同盟を国家として認めず、長らく「辺境の叛徒」「自由惑星同盟を僭称する叛徒ども」呼んでいたが、この「冬バラ園の勅令」により、273年の歴史に幕を下ろした後、初めて国家として承認された。
併呑後、旧同盟領はノイエ・ラント(新領土)と改称され、旧同盟首都星ハイネセンに設けられたノイエ・ラント総督府の施政に置かれた。しかし民主主義の存続を願うものたちは、その後ヤンのもとに結集していく。

フェザーン自治領[]

帝国と同盟を結ぶ2つの回廊の一方にあたるフェザーン星系の第二惑星に作られた商業惑星国家。地球出身の大商人レオポルド・ラープが帝国に強くはたらきかけて帝国暦373年(宇宙暦682年)に成立。帝国と同盟の間で侮られない程度、脅威を持たれない程度の微妙なバランスを保ちつつ勢力を維持しつづけた。国家元首は自治領主と呼ばれ、初代ラープ以来5代にわたり当地を治めてきたが、帝国暦490年(宇宙暦799年)に帝国軍の侵攻によって占領され、完全に帝国領に併合。
法的には帝国内の自治領であり、銀河帝国に対して貢納の義務を負うが、実質的には独立国家で、同盟との国交も有する。この為交戦状態の帝国と同盟が唯一平和的に交わる為の窓口となっていた。フェザーンはこうした政治的立場を利用して帝国と同盟の間の中継貿易を行い莫大な利益を上げていた。このため、僅か一つの惑星しか領土を持たず、人口比でも3%弱に過ぎないにもかかわらず、銀河系全体の1割の富を独占、惑星フェザーン自体もハイネセンやオーディンを凌ぐ銀河で最も繁栄した惑星となっていた。軌道エレベーターが設置されているのもこの惑星だけである。こうした豊かさは社会の底辺にも行き届いているようで、駐在武官として赴任していたユリアンはその就任記念パーティに於いて、フェザーンの下町の清潔さと野良猫が太っている事を例に挙げて、フェザーンの健全な経済状態を高く評価している(残念ながら参列者の中でこの譬えの意味を理解した者はケッセルリンク自治領主補佐官以外にいなかったが)。
また「独立自由商人の国」とも呼ばれており、零細企業・ベンチャービジネス優遇を経済政策としているように思われる。一方でフェザーン系企業は自由惑星同盟や銀河帝国に盛んに投資を行っている様子であり、これはフェザーンの国家戦略である事が作中の描写からうかがえ、大企業に対しては政府から何らかの働きかけがあるようだ。
フェザーンは一見単に利潤のみを追求する純粋な商業国家のようであったが、実際には失地回復を目論む地球教(地球統一政府の残党)によって影から操られていた。フェザーン建国の資金も地球統一政府が秘匿していた富から出ていたとされる。
帝国領に併合後、新帝国暦2年(宇宙暦800年)皇帝ラインハルトの遷都令によって、フェザーンは新帝国の帝都となった。旧帝国領と旧同盟領の双方を支配下に置いたローエングラム王朝にとって、両者の何れとも交通の便がよくインフラも整っているフェザーンは新帝都として絶好の地であった。

その他の勢力[]

地球教団[]

人類の母星である地球への帰依を説く宗教団体。また銀河連邦、銀河帝国時代を通じて地球の自治権が認められた(というより事実上放置された)事から、地球を支配する政体でもある。帝国・同盟を問わず信者を増やし続けている。しかし実際には崇高な信仰心からでなく、かつて地球が持っていた特権的な地位を取り戻す、その手段として結成された様子である。この時代においては手段の目的化が見られ、かなり高位の幹部も主観的には純粋な信仰心を持っている様子(例外はド・ヴィリエ大主教)だが、同時に政治工作やテロを繰り返している。フェザーンの成立には地球教の資金が投入されており、歴代のフェザーン自治領主は地球教と深くつながっている。

門閥貴族連合[]

ラインハルトらが政治の実権を握ったことに反発した帝国貴族らの連合。ガイエスブルグ要塞を拠点に反乱(リップシュタット戦役)を起こした。保有する戦力・財力は当時のラインハルトを凌ぐほどだったが、所詮は烏合の衆に過ぎず、盟主と副盟主が仲間割れを起こし、更にヴェスターラントに核攻撃を行った事で民心を失い崩壊した。

救国軍事会議[]

同盟の政治的腐敗を憂いた軍内部の将校らが結成した組織。議長はフレデリカの父ドワイト・グリーンヒル大将。クーデターを起こした際の布告は、挙国一致体制の確立、表現・言論の自由の制限、戒厳令の施行、議会の停止、社会保障の削減など、500年前のルドルフの政策と何ら変わらないものだった。クーデターは成功するかに見えたが、機動戦力である第11艦隊がドーリア星域で敗北し、直後に起こった「スタジアムの虐殺」で2万人以上の犠牲者を出した事で人心掌握に失敗する。結局、ハイネセンを守る12個の軍事衛星「処女神(アルテミス)の首飾り」の破壊で戦意を喪失して降伏、首謀者のドワイトは死亡した。後にクーデター派のアーサー・リンチがラインハルトにクーデター計画を持ちかけられ、それを実行していたに過ぎないことが判明する。

銀河帝国正統政府[]

レムシャイド伯爵・ランズベルク伯爵ら門閥貴族の残党達が、当時の銀河帝国皇帝エルウィン・ヨーゼフ二世を誘拐し、同盟に亡命して立ち上げた政府。レムシャイド伯爵は「首相」を名乗り、一応は立憲君主体制であると思われるが、支配すべき人民も指揮すべき兵も持たず、民主体制への移行は正統政府が再び銀河帝国の支配体制を築いた後の約束に過ぎない(レムシャイド伯らにとって不本意な約束であり、その範囲内で何とか旧貴族の権力を取り戻す事を画策していたようだ)。ラインハルトの同盟領侵攻後まもなく内部から崩壊した。

エル・ファシル独立政府[]

「バーラトの和約」直後、実質的に帝国支配下となった同盟の混乱期において、同盟からの独立を唱え勃興した政体。国家の呼称案のひとつとして自由惑星同盟“正統政府”があること等から、搾取と抑圧の象徴たる「専制政治」に正対する自由と解放の象徴・民主共和制の回復を、当時の同盟から引き継ぐことを政治理念として掲げていたようである。様々な情勢変化によってヤン一党を「革命予備軍」として招聘することとなるが、おそらくは素人政治家である政府主席ロムスキー医師が、その情熱だけで立ち上げた政府であり、きちんとした政策立案できるプロ政治家も存在しないと見られ、ロムスキー医師とヤンが死去した後、程なくして瓦解してしまった。

イゼルローン共和政府[]

ヤン・ウェンリー亡き後、ヤンの妻であったフレデリカ・グリーンヒル・ヤンを指導者としてイゼルローン要塞に成立した共和政府。別名として、成立した月の名前をとり「八月の新政府(ニュー・ガバメント・イン・オーガスタ)」とも称される(しかし、作中でその名が用いられたことはない)。軍隊は「イゼルローン革命軍」と呼ばれ、ユリアン・ミンツが司令官となった。しかし構成員のほとんどは軍人であり文民が極めて少数であり(ちなみに男女構成比も男性が圧倒的に多い)、フレデリカが積極的に主導権を発揮した事実は無く、政府としての実体は無い様子である。イゼルローン革命軍がアーレ・ハイネセンとヤンを旗印として民主共和制の復興を目指すための体裁に過ぎないと思われる。帝国軍に対し戦術的な勝利を積み重ね、帝国側の事情もあり妥協が成立、後に旧同盟首都バーラト星系の自治権を勝ち取り、おそらくこの時解散したものと思われる。

銀河帝国成立前の歴史上の勢力[]

地球統一政府[]

西暦2030年代に勃発した世界大戦とその後90年に及ぶ混乱を収拾し、2129年に成立した統一政体。長きにわたる混乱から人類社会を復興させ、宇宙開発に尽力した。24世紀末には超光速航行を実用化し、25世紀初頭に太陽系外に居住可能惑星が発見されると太陽系外へと人類の生存権の拡大に着手した。しかし27世紀に入ると植民星系を強権を持って支配した結果反発が起こり、武力衝突へと進展した。27世紀後半のシリウス戦役では、緒戦においては優勢であったが、「ラグラン・グループ」の活躍によって植民星系側も反撃に転じ、地球の支配体制は崩壊。2704年のシリウス戦役終結により事実上消滅。

シリウス政府[]

地球軍によって破壊された、シリウス星系第六惑星ロンドリーナのラグラン市の生き残りである「ラグラン・グループ」{精神的・論理的指導者のカーレ・パルムグレン、行政・経済担当のウィンスロー・ケネス・タウンゼント、反地球統一政府軍の黒旗軍(Black Flag Force)総司令官ジョリオ・フランクール、諜報及び謀略担当のチャオ・ユイルンの4人。}が地球政府を滅ぼし、植民星系勢力を糾合して結成した政府。
政体としては、タウンゼントが首相、フランクールが国防相に就任している以外は不明。バルムグレンが国家元首的な地位にあったと思われるが、その名称も不明である。政府の基盤が固まらないうちに、パルムグレンの死をきっかけにラグラン・グループ内で権力闘争が勃発して、瓦解する。

汎人類評議会[]

詳細は作中で述べられていないので不明だが、地球統一政府と植民地惑星国家が代表を出して運営される、人類全体を包括する国家連合機構と思われる。ただし地球と植民星が平等であるという体裁を繕うための存在であり、地球出身者が議席の7割を占め、実質上は地球が各植民星に対して優位に立っていた。
シリウス戦役(地球統一政府滅亡)以降、 バルムグレン死後は、シリウスの首相であるタウンゼントが汎人類評議会主席を兼ねていた事から、おそらくシリウス政府が優越していたと思われる。シリウス政府の最高権力者が首相である(普通は首相の上に元首が存在する)事から、汎人類評議会主席はシリウスを含めた各惑星の国家元首的地位と見なされ、パルムグレンも生前はこの地位にあった可能性もある。結局の所タウンゼントの死とシリウス政府の崩壊とともに、同時に崩壊したものと思われる。

銀河連邦[]

シリウス政府瓦解後の混乱を収拾して成立した人類全体を包括する単一民主政府。西暦2801年に、アルデバラン星系第二惑星テオリアを政治的中枢として成立した。ちなみに銀河連邦が成立した西暦2801年は宇宙暦1年と改められた。国家元首と首相が存在し、前者は議会によって選ばれ、後者は国民投票で選ばれる(原作の設定。OVA版では逆になっている)。このシステムによって権力分散を図っている[4]。成立当初から中期にかけては進取の気性に富んでいたが、長い平和に飽いて人心は荒廃し、末期には様々な社会問題が噴出していた。やがて、腐敗の一掃を唱えるルドルフ・フォン・ゴールデンバウムが(兼任禁止が不文律であった事を利用して)国家元首兼首相として独裁権をふるうようになり、宇宙暦310年、実質的にルドルフに乗っ取られる。ルドルフが国民投票によって皇帝に就任し、銀河帝国が成立したことで消滅。それは民主主義の死をも意味していた。

関連項目[]

参考[]

  1. 民衆の支持を集めて改革を促進している事は専制政治の長所ではなく(専制政治は民衆の支持を必要としない)、むしろ独裁政治に対する高評価である。
  2. ラインハルトは、前述の通り息子が継ぐ必要は無く強い者が継げばよい、立憲制に移行してもよしと述べたが、最後にヒルデガルド皇妃に全てを委ねる旨を言い残した。
  3. アニメ版の設定では帝国は銀河系のオリオン腕に、同盟はサジタリウス腕にあるとされる。
  4. 半大統領制に近いが、現実の政体としての半大統領制は、むしろ大統領の権限が強い政体である。実権を持たない大統領を置く議院内閣制とも考えられる。
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