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プロフィール
ヤン・ウェンリー
Yang Wen-li
Yan
所属:自由惑星同盟
生年月日:宇宙暦767年4月4日
性別:男性
配偶者:フレデリカ・グリーンヒル
家族:ヤン・タイロン
カトリーヌ・ルクレール・ヤン
搭乗艦:グメイヤ
ヘクトル
アイアース
パトロクロス
ヒューベリオン
ユリシーズ
レダII
声優:富山敬
郷田ほづみ
原康義
  


ヤン・ウェンリー(Yang Wen-li、宇宙暦767年4月4日 - 宇宙暦800年6月1日)は、銀河英雄伝説の自由惑星同盟側主人公。物語を一部解説する役目を担っており、作者の田中芳樹に最も近い意見を提示する役でもある[1]

名はE式表記[2]、つまり姓が先にくる表記で、作中ではカタカナ表記であるが、本来の表記ともいうべき漢字表記では「楊文里」であるという[3]

外見 編集

容姿・容貌 編集

中仏混血で東洋系の容貌である。原作小説において、“体格は中肉中背、容姿は実年齢より2~3歳若く見え、軍人というよりは学者のような印象を受ける。頭髪はおさまりの悪い黒髪、「見る人(フレデリカ・グリーンヒル等)によってはハンサムに見えなくも無い」「ごくありきたりのハンサム」”といった表現が作品内に見える。

道原かつみのコミック版では、美男子の部類に設定されているが、同時に軟弱で頼りないイメージを持たせ、一応原作の描写を踏襲している。らいとすたっふ監修「全艦出撃!!」第2巻に収録された道原かつみのコメント「なぜヤンがハンサムになったか」には、「黄金の翼を執筆する時点で、道原はヤンをハンサムには設定していなかった。しかし周囲の様々な意見もしくは非難によって徐々にキャラクターを改修していった」という内容の記述がある。また、コミック版黄金の翼あとがきには「原作者である田中芳樹をモデルにしようとしたら、担当編集者及び田中芳樹本人から猛反対を受けた」との記述もある。

原作小説では、表情を隠すなどの理由で、サングラスを使う描写がある。アニメ版では、ヤンに限らず眼鏡類の使用はあまり見られないが、銀河帝国貴族の一部が片眼鏡を着用する場面がある。漫画版では、軟弱に見えるヤンがサングラスを使用すると格好よく見えるため、ヤンを賞賛する報道ではサングラス姿のヤンの画像が流されるという演出がなされている。

身長・体重 編集

OVA版の外伝・螺旋迷宮で示された身分証明書によると、21歳の時点で身長172cm、体重65kg。なお原作での彼の身長は176cm(明確には記述されていないが、フェザーン脱出時のユリアン・ミンツの身長に関する記述で「身長は176cmに達しヤンと並んでしまった」と書いてある)。

略歴 編集

宇宙暦767年生まれ。5歳の時に実母であるカトリーヌ・ルクレール・ヤンが死亡。星間交易船の船長であった父ヤン・タイロンの元で育った。早くから歴史研究家になることを志しており、商売人になる事を薦める父親を説得して歴史研究のために大学進学をすることを認めてもらった。しかしその直後に父親が事故死し、更に父親の蒐集していた美術品が全て贋作と鑑定された[4]ため実質的な遺産がなく、無一文になってしまい、学費の捻出ができなくなってしまう。

15歳の時、無料で歴史を学べるという理由から、本来は他学科に入学できなかった者が入る学科である、同盟軍士官学校戦史研究科に入学。しかし在学中に戦史研究科が廃止されることとなり、学科の存続に向けて運動した[5]ものの結局戦史研究科は廃止されヤンは戦略研究科に転科させられた。

エリートコースである戦略研究科に転科させられたのは、最優等生であるマルコム・ワイドボーンとの戦闘シミュレーションにおいて勝利した事が影響している。このころから既に同盟軍はヤンの素質に対して一定の評価をしていた。

士官学校卒業後、同盟軍に少尉の階級で任官するが、勤勉とは言えない勤務態度から「ごくつぶしのヤン」「無駄飯食いのヤン」などと呼ばれるが、宇宙暦788年(21歳/中尉)、惑星エル・ファシルから300万人の民間人を救出したことから評価が急転、少佐に昇進し、さらに「エル・ファシルの英雄」と賞賛されて世の注目を浴びることとなった。なお、この時、救出した民間人の中に、当時14歳だったフレデリカ・グリーンヒルがおり、後に妻となる。

その後も、退役し歴史研究家になるという本人の意志とは裏腹に、最前線において武勲を重ね軍人として栄達していく。

宇宙暦796年、アスターテの会戦で負傷した艦隊司令官パエッタの後を受けて第2艦隊を指揮、初めてラインハルトと砲火を交え、その奇策で艦隊を全滅の危機から救った。なお、劇場アニメ版「わが征くは星の大海」では、795年の第4次ティアマト会戦において両者は対峙している。大海でのヤンは戦艦ユリシーズに搭乗して単艦敵陣に潜入、同盟軍にとどめを刺そうとしたラインハルトの旗艦ブリュンヒルトの艦底に密着、ラインハルトを艦ごと人質に取る荒芸で味方が殲滅されるのを防いだ。アニメ版では、この一件でラインハルトとヤンは互いの名を知り、その存在を互いに意識した。

アスターテ会戦より帰還後、政府及び軍部の思惑で少将に昇進、アスターテの残存兵力に新兵を加えて新たに編成された第13艦隊の初代司令官に任ぜられる。その規模は5400隻・将兵70万人で通常の1個艦隊のほぼ半分であり、半個艦隊と称された。また、この時にフレデリカ・グリーンヒルを副官に得た。

同年5月14日、第十三艦隊の最初の任務で、難攻不落といわれたイゼルローン要塞を術策によって陥落させ、中将に昇進。第13艦隊も第2艦隊の残存兵力が加わり1個艦隊として再編成される。この功績から、「魔術師ヤン」「奇跡のヤン」と評されるようになった。

同年行われた「同盟軍の帝国領侵攻」で第5艦隊とともに帰還を果たした後大将に昇進、「イゼルローン要塞司令官・兼・イゼルローン駐留艦隊司令官・同盟軍最高幕僚会議議員」という身分を得てイゼルローン要塞に赴任する。

宇宙暦797年の救国軍事会議のクーデターでは、各地の反乱を鎮めながらハイネセンへと進攻し、同年5月18日のドーリア星域会戦でルグランジュ率いる第11艦隊を撃破、8月にはハイネセンの「アルテミスの首飾り」を破壊して軍事会議メンバーの戦意を挫きクーデターを鎮圧する。

宇宙暦798年のガイエスブルク要塞侵攻による第8次イゼルローン攻防戦では、直前にフェザーンの讒言を容れた同盟軍政府によって反乱の嫌疑を抱かれ、ハイネセンに召還され非公式の査問会にかけられる。この対応に嫌気が差し本気で軍を辞めるべく辞表を認めるも、それを提出する劇的な機会を得られぬうちに、ガイエスブルグ要塞来襲の報をうけた同盟政府の発した防衛命令を受けてイゼルローンに戻る。戦場では特攻を仕掛けるガイエスブルク要塞を破壊し、司令官のカール・グスタフ・ケンプを戦死させる。

宇宙暦799年、「ラグナロック作戦」の過程でイゼルローン要塞を放棄しハイネセンに帰還した時点で同盟軍史上最年少の元帥に昇進、同時に戦略・戦術面の自由な裁量をアイランズから保証され、艦隊を再編成して出動、様々な術策を駆使してカール・ロベルト・シュタインメッツヘルムート・レンネンカンプアウグスト・ザムエル・ワーレンといった帝国艦隊を相手に次々に勝利し、バーミリオン星域会戦でもラインハルト・フォン・ローエングラムナイトハルト・ミュラーを相手に圧倒的に優勢に戦いを進めた。しかしラインハルトの旗艦のブリュンヒルトを射程に収めたところで同盟政府の発した戦闘停止命令並びに無条件降伏の通達をうけ、シェーンコップら一部幕僚の攻撃続行の意見具申をも却下して戦闘を停止した。戦闘を継続していればラインハルトを討ち取れる可能性もあったが、ヤンは戦闘停止の命令を受け入れることが民主主義の精神にかなっていると信じて、戦闘停止の命令を受け入れたのである。

停戦後に行われたラインハルトとの会談で、帝国元帥の座を用意して引き抜こうとした新皇帝ラインハルトの誘いを謝絶し、5月25日にバーラトの和約が締結されると退役、一市民として生きる道を選ぶ。6月には副官であったフレデリカ・グリーンヒルと結婚した。

7月、オーベルシュタインとレンネンカンプの策謀により扇動された同盟政府に暗殺されかけるが、ヤン艦隊の仲間に救出され、逆にジョアン・レベロとレンネンカンプを拉致して同盟政府と交渉し、25日にハイネセンを脱出、一時的に身を隠す。同年12月、エル・ファシル独立政府に身を寄せ、革命軍を組織してイゼルローン要塞を奪還

宇宙暦800年の「回廊の戦い」でアーダルベルト・フォン・ファーレンハイトカール・ロベルト・シュタインメッツを戦死させる等、着実な戦果を挙げて、皇帝ラインハルトより会見の為の一時講和を引き出す。その会談に向かう途上、地球教徒のテロリストに襲撃され、6月1日午前2時55分、ビーム銃による銃撃で左大腿部の動脈を損傷し出血多量を起こし死亡。33歳。

能力 編集

戦場における卓絶した心理学者であり、魔術と評される自在の戦術を弄した。ただし戦術に溺れる事なく、戦術的勝利で戦略的不利を覆す事ができない事をよくわきまえていた。寡兵で大軍に勝利する事を繰り返しながらも、それを邪道と自覚し、あくまで戦の本道は敵より多数の戦力を準備する事と、それを支える兵站を整えることが重要であると深く理解していた。そのため本質的には戦略家であったとされるが具体的実績は示しておらず、その評価はあくまでも「後年の史家」による推測に留まる。敵手であるラインハルトの作戦をその優れた戦略眼で先読みした事はあるが、同盟軍での地位と立場に制約されてその戦略能力を活かす機会を与えられず、後には自身が戦局を左右する機会を得てもシビリアン・コントロールの原則を墨守して自ら活用する事なく終わった。

軍歴で挙げた武勲・戦歴に比して士官学校時代はごく平凡な成績であった。戦史や戦略、戦術などの得意分野で高い成績を収めたものの、興味のない分野では可能な限り手を抜いていたことによる。査問会において開示された士官学校時代の成績表によれば、「戦史」98点、「戦略論概説」94点、「戦術分析演習」92点に対し、「戦闘艇操縦実技」と「機関工学演習」が59点、「射撃実技」は58点である。士官学校は一科目でも赤点(55点以下)を取れば退学であった為一時は卒業も危ぶまれたらしい。卒業時の席次は4840名中1909番であり、キャゼルヌはこれを「中の下」、ユリアンは「中の上」と評した。

才覚の片鱗を最初に示したのは、士官学校の戦略・戦術の授業に於いて、シミュレーションで学年首席だったマルコム・ワイドボーンに勝利した時である。敵の補給線を分断して継戦能力を損ない自滅を待つという合理的だが「軍事ロマンチシズムに反する」戦法を採用した為、戦闘そのものでは優位だったワイドボーンは自分の負けを認めなかった。ただし、戦略・戦術において補給は最重要視すべき要素の一つであり、戦略研究科に転科を命じた教官の発言からも、教官側はワイドボーンの主張を受け入れず、ヤンは間違いなく勝利したと判定された。

具体的に軍隊において最初にその才覚を表したのは、宇宙暦788年の惑星エル・ファシルでの民間人救出時である。当時は中尉だったが、この功績によって少佐に昇進した。なお、生者に二階級特進は無いという不文律から、9月19日10時25分に大尉への昇進辞令を、同日16時30分に少佐への昇進辞令を受領した。生涯で最も短い期間が大尉、最も長い期間が少佐とされている。また、この功績は同盟軍の宣伝により世間に広く知られ、「エル・ファシルの英雄」と讃えられる事となったが、敢えて英雄を祭り上げる裏には民間人の保護を放棄したミンチら同盟軍の失態を隠す面もある。

帝国側の主人公であるラインハルト・フォン・ローエングラムがヤンの存在と能力を認識したのは、原作小説ではアスターテ会戦。アニメでは劇場版第一作で描かれた第四次ティアマト会戦の時である。これ以降、ラインハルトはヤンを注視し、第13艦隊の司令官に就任した時点でも、その才華が自分にとって軽んずるべきものでは無いという意味の懸念をキルヒアイスに告げている。この懸念は的中し、ラインハルトはヤンとの直接的な戦いで遂に勝利する事が出来ず、配下の将帥もことごとく敗退、さらにはケンプファーレンハイトシュタインメッツなどの重臣を喪った。

帝国上層部がヤンの存在を重視する様になったのは、当時は半個艦隊だった第13艦隊イゼルローン要塞を無血占領した時である。それ以前のアスターテ会戦での功績等は上層部でも噂になっていた(ラインハルトが元帥に就任した時の雑談より)が、この時点で具体的な対応がなされたという記述は無い。

バーラトの和約以後は、その軍事的才覚と市民からの人気は同盟上層部にとっては不安材料となり、ヤンの蠢動を口実とする帝国からの介入を恐れる同盟政府が具体的に抹殺の挙に出たためにハイネセン脱出を余儀なくされる。後に身を寄せたエル・ファシル独立政府からも全面的な信頼を寄せられることはなく、イゼルローンの再奪取作戦においては直接指揮を執る事を認められなかった。しかしこれは後輩であり部下であるアッテンボローを後方から督戦させる経験を積ませる意味もあったので一概に不本意でもなかったようである。

後世、ヤンは同盟軍の宇宙艦隊司令長官や最高司令官の地位にあったと言われがちだ(と作中において設定されている)が、同盟軍在籍時代はそのような地位にはついておらず、最終的にはイゼルローン要塞司令官及び駐留艦隊司令官のままであった。後にエル・ファシル革命政府に合流した際は、「革命予備軍最高司令官」の地位を与えられたが、その肩書きに実質的意味があったかどうかは疑問である。またヤンのイメージとして後方で全軍を統括、指揮する軍師のようにも言われるが、実際は前線で陣頭指揮を取ることが大半で、後方から指揮を取ったのは上記のイゼルローン再奪取作戦が最初かつほぼ唯一の例であり、戦略家としての活動は救国軍事会議のクーデターの危険を上官であるビュコックに示唆したことや「神々の黄昏作戦」時の帝国軍のフェザーン侵攻を予見する意見具申をした程度に留まる。帝国軍の「ラグナロック(神々の黄昏)作戦」以降は実質上全軍を指揮し得る権限を与えられたが、その時は既に同盟軍の過半以上が失われ、後方から督戦するほどの艦艇も、ヤンに代わるような有能な前線司令官も存在せず、ヤンは最前線で戦わざるを得なかった。「ウランフボロディンが生きていればもっと楽ができた」と両名の戦死を惜しんでいる。また、ミュラーと言葉を交わした際、ヤンはミュラーが同盟に生まれていたら、自分は昼寝をしていられたのにとぼやいている。ヤンが戦場で指揮した艦艇は最大でも3万隻に及ばず、数だけで言えばラインハルトキルヒアイスはおろか、ロイエンタールミッターマイヤーよりも少ない。ラインハルトなどからはヤンに数個艦隊を指揮させたらどれだけのことが出来るのかと言われた。

ラインハルト・フォン・ローエングラムの「常勝」に対し、ヤンは「不敗」と評される。現に、アスターテ会戦など敗北が確定してから敗残処理の任にあたったケースでも自軍を崩壊させずに撤収しており、最初から彼が指揮した戦闘においては、バーミリオン星域会戦を例外として一度も敗れた事は無い。そのバーミリオン星域会戦においてもラインハルトミュラーを戦術的には圧倒し、同盟政府の戦闘停止の命令を容れて停戦こそしたが「戦場では勝っていた」とされる。ただし、ヤン自身は戦術より戦略を重視する立場から、自分のほうが敗北したと自覚していた。最終的に不敗のまま、テロリズムに倒れて生涯を終えた。

戦場においては卓越した心理的洞察を示したが、政治的立場や私生活での対人関係においては、そうした洞察力が及ばず、きわめて鈍感な側面を見せている。また、生来のものぐさな性質から、異なる価値観を持つ人々に対し、自分の思考を理解させ説得するということにきわめて消極的で、自身の保身についても全く配慮を見せないという不用心な面がある。その結果、同盟の政治家トリューニヒトに疎まれるのはもとより、しまいにはレベロからも疎まれ、帝国のレンネンカンプにも疑惑を抱かれている。その点で政治的資質は完全に欠けていたとされている。

人柄 編集

本来は歴史研究家志望で、権力者や戦争、軍に対する嫌悪と、軍人としての自身の存在に懐疑を抱き続け、「矛盾の人」と評されるが、「自由と民主共和制」を愛し続け、後世にその萌芽を残す。

安定した人格と包容力の持ち主ではあったが、怠惰で毒舌家であり、嫌いな人間に対しては極端に意固地で、「温和な表情で辛辣な台詞を吐く」とも言われた。特に権力者には容赦がなく、安全な後方で戦争を賛美する者や、軍事的権力をかさに弱者に強権を振るう者にも容赦ない。「軍人の民間人への危害」と、「上官による部下への私的制裁」を心から憎悪していた。軍を嫌悪しつつも、立派な人物へは敵味方を問わず敬意を払っていた。敵将への尊敬と礼節は常に心がけ、殊にラインハルトやその配下の提督たちへの賞賛は惜しんでいない。

部下を深く信頼する人物である。自身は司令官としての作戦能力は卓越していたが、自身の能力の及ばない分野については、その専門を担う部下に大幅な権限を託していた。一方でキャゼルヌシェーンコップポプランヤン艦隊の毒舌家メンバーからは好き放題に言われ、その様子はユリアンに「こんな裏切り者達を引き連れてよく勝ってこれたものだ」と評されているが、それは人望と包容力があったことの裏返しである。更に、帝国側の提督達からさえも一目置かれ、時に尊敬を思わせる発言を口にする者もいる。同盟に亡命する前のシュナイダーの論評などから、その変わり者ぶりと寛容さは帝国側にも広く知られたと思われる。特にヒルダは、バーミリオン会戦での一件や、ハイネセンから脱出した後の勢力分析をみても、ヤンの人柄を最も的確に見抜いていたと思われる。 反面、当時の同盟政府、特にトリューニヒト派からは、戦争を賛美する思想に反対し、政権への服従心や忠誠心が乏しいことから危険分子扱いされた。最後には非トリューニヒト派の代表格であったレベロにまで疎まれ、同盟からの脱出を余儀なくされた。

事有る毎に退役後の「年金」を気にする発言を行っており、作者の田中芳樹はそれを指して「問題児」と称していた。ただし、金銭や名誉・地位への執着は全く無い。むしろ金銭や名誉・地位を得るための「勤勉」を忌避していた。年金に対する固執は、働かなくても生活できる環境に対する固執であり、作者の言う「問題児」というのは、むしろ「怠惰」の事を指していると思われる。

父を事故で失ってからは家族はなく、トラバース法で引き合わされたユリアン・ミンツとの二人暮しであった。原作ではペットというものを忌避する発言をしている。アニメ版では「元帥」と呼ばれる猫も飼い、任地にも連れている。後に副官であったフレデリカ・グリーンヒルと結婚する。フレデリカに対しては赴任してきた後、割と早くから好意を抱いていたようだが、軍人として敵味方を含め多くの人間を死に至らしめている自分が家庭的な幸せを得る事への違和感や罪悪感、二人の年齢差が、その想いを伝えることを躊躇させていた。バーミリオン会戦を前に想いを打ち明け、その際フレデリカから自分の両親も年齢差があったことも告げられた。

女性関係については同じく同盟軍の英雄であったリン・パオブルース・アッシュビーに比べればはるかに淡泊であったが、部下であるポプランやシェーンコップの女性関係についても寛容であり、この点はラインハルトと共通している。

副官であり、後に妻となったフレデリカ以外には、学生時代にジェシカ・エドワーズに対して好意を寄せている様子が見られる。士官学校卒業後(外伝4巻)ではラップとジェシカは恋仲になっている様子で、ジェシカはヤンに対して「私もあなたの親友のつもりよ」と告げている。つまり友達ではあるがそれ以上ではないという意思表示でどうやらヤンは失恋した様子である。尚、OVA版の描写では、親友のラップがジェシカに想いを寄せていると察知し、自ら身を引いたが、ジェシカの方はむしろヤンに強い想いを感じていたと思わせるような描写もある。ラップの死後、あるいは失恋して以後もジェシカに思慕を寄せていたようで、ジェシカの死はかなりの衝撃であったようだ。ユリアンはフレデリカのほうに目を向けたほうが建設的ではないかと感じていた(外伝2巻)。

大の紅茶党であり、特にブランデー入りの紅茶を好んでいた。一方でコーヒーは嫌いで「泥水」と呼ぶなどかなり否定的な発言も口にしている。バーミリオン会戦後のラインハルトとの会談の時にエミールが持ってきたコーヒーには口をつけているが、アニメ版では口にした際に一瞬顔をしかめる描写がある。またエルファシルでの撤収作戦においてサンドイッチを喉に詰まらせたときに、フレデリカが差し出したコーヒーを飲んでいるが、直後に「紅茶の方が良かった」と述べている。酒も好み、ブランデー入りの紅茶は時に「紅茶入りのブランデー」になっていたこともある。風邪を引いた時にユリアンがホット・パンチを作ったときにワインの分量を多くするように頼んだり、酒類に関する支出は時が経つにつれて増えているとユリアンに指摘されるエピソードもある。

三次元チェスが趣味だが、その腕前は下の中程度。作中で、パトリチェフやブルームハルト、スールには勝てるが、キャゼルヌやユリアンには歯が立たないエピソードが登場する。用兵家としての能力とは矛盾するようであるが、ユリアンはチェスの最中にも別の事を考えているようだと弁護している[6]

家事、日常生活に関しては全く頓着せず、ユリアンが養子としてヤン宅に訪れるまでは文字通りゴミに埋もれて生活していた。以降、ヤンが結婚するまで家事一般はユリアンが担当していた。キャゼルヌやユリアンらから「生活無能力者」等と評され自身も自嘲してそう言うこともある、ユリアンがフェザーンへ行った際は寝坊しないかといった次元の心配をされていたが、本人は全く意に介していない。 ただし、金銭的感覚については、父親の死によって無一文になった際に士官学校という進路を見つけて糊口をしのいだ事、ユリアンの将来のために貯金をした事、フレデリカとの新婚生活において減額された年金の範囲内で生活設計するなど、必要最低限のものは備えており、決して生活が完全破綻するほど酷い訳ではない。

指揮を執る際は「指揮デスクの上で胡坐をかく」「立てひざで座る」という「行儀の悪い」姿勢を好む。第8次イゼルローン攻防戦においては衝撃で一度デスクから落ちても再び指揮デスクに上って座りなおしており、そのスタンスは徹底されている。これは味方の将兵を安心させるために意図的に行うこともあった。

テロリズムについて「歴史を変えることはできない」とかなり嫌悪感を込めた否定的発言を行っているが、一方で「…停滞させることはできる」として、脅威として捉えていた。自身がテロによって倒れた事は、作中の「後世の歴史家」によって歴史の皮肉として語られている。ヤンの死によって歴史が変わったかどうか、もしヤンが死なずにラインハルトとの会見が実現した場合、和平が成立したのか、あるいは決裂して最終決戦に至ったのか、については、後世の歴史家の間でも意見が分かれている。もし会談で和平が齎されたのならば、現実にもユリアンが後に和平を成立させており、歴史は変わらなかったという事で、ヤンの見解通りという事になる。

ラインハルトは、ヤン死亡の報に接して、これを伝えたヒルダが目の前にいるにも関わらず取り乱し、感情を激発させている。この様子から、ラインハルトがヤンに対して、単なる敵将にとどまらない思い入れを感じている事が伺える。同様に他の帝国軍幕僚たちも「自分たちを油断させるための罠では無いか」と疑いを持ち、ヤンの死を容易に受け容れられなかった。これは同時に復讐する機会を永遠に失ったことへの怒りに近かった。なお、人格面におけるヤンとラインハルトの共通点としては、私生活が質素であること、バグダッシュやフェルナーなど図々しく悪びれない人間に対する寛容などが挙げられる。ジョークについてのセンスを欠く点も共通点している。一度ヤンがラッツェル大佐に披露した自作のジョークは、技巧の度が過ぎてウイットにもなっておらず、笑えないものであった。ただしラインハルトはユーモアのセンスそのものが貧弱であるのに対し、ヤンは表現力に問題があるだけという違いはある。

死後もヤン・ウェンリーの名は共和主義者の英雄として祭り上げられ、そのカリスマは彼の遺志を継いだユリアンらによって(生前のヤン、そしてユリアンにとっても不本意な事ながら)イゼルローン共和政府の権威の拠り所として利用されてゆく事になる。

「銀河英雄伝説」が歴史小説の体裁を採っているため、一方の主人公であるラインハルトと同じく「後世の歴史家」の彼に対する評価が多々存在する。功績の偉大さのため、ハロー効果により人格までも神格化され、「休んでいる時にもその脳裏では策略を練っていた」など明らかに過大評価される事がある一方、一部の歴史家からは、「彼の無用な抵抗によりラインハルトの統一が遅れ、歴史に不必要の混乱と出血を招いた」として厳しい評価も下されている。また、本人が民主主義に対して多大な期待を寄せている一方、自分自身がトップに立って民主主義を擁護しようとはせず、あくまで「第二人者」以下の立場に固執しようとする姿勢を、「覚悟が不十分であった」と批判されることも多い。ただしヤン本人はその種の批判に対し、「半数が味方になってくれれば大したものさ」と意に介した様子はなかった。

アニメの登場人物としての彼は、寡兵をもって度々ラインハルト率いる大軍を打ち破る指導力の高さ、穏やかで優しい人柄、ユリアンや仲間達に対する語り口、戦争観と歴史観、そして演じた富山敬の声などから、完結から十数年経った今もなお、ファンの間で絶大な人気を誇るキャラクターである。

座乗艦 編集

艦隊司令官就任前の座乗艦
  • エル・ファシル星域警備艦隊旗艦「グメイヤ」(中尉:警備艦隊幕僚として乗艦)
エル・ファシルの戦い(外伝『螺旋迷宮』)
  • 第8艦隊旗艦「ヘクトル」(少佐:作戦参謀として乗艦)
第5次イゼルローン要塞攻防戦(外伝『黄金の翼』)
  • 宇宙艦隊総旗艦「アイアース」(大佐:宇宙艦隊総参謀長ドワイト・グリーンヒル大将直属の作戦参謀として乗艦)
ヴァンフリート会戦第6次イゼルローン要塞攻防戦(外伝『千億の星、千億の光』)
  • 第2艦隊旗艦「パトロクロス」(准将:第2艦隊次席幕僚として乗艦)
惑星レグニッツァ上空遭遇戦第4次ティアマト会戦(劇場版第1作『わが征くは星の大海』)、アスターテ会戦(OVA第1話~第2話。劇場版第2作『新たなる戦いの序曲』)
第13艦隊司令官就任後の座乗艦
第7次イゼルローン要塞攻防戦バーミリオン星域会戦
動くシャーウッドの森との合流後~回廊の戦い
第8次イゼルローン攻防戦(ガイエスブルグ要塞戦)」において、ハイネセンへの出頭時と増援部隊を率いてイゼルローン要塞に戻る時。なお、レダIIは皇帝ラインハルトとの会談に向かう時の乗艦として使われ、結果としてヤンの死場所となった。

最初に旗艦とした戦艦ヒューベリオンは、ヤン艦隊の象徴として敵味方に広く知れ渡っていた。また、アムリッツァ会戦後、最新鋭の旗艦級戦艦トリグラフが配備されたときもヤンは旗艦を移動せず、アッテンボローの分艦隊旗艦にしてしまった。本人曰く「(見た目が美しい)あの艦(トリグラフ)は乗るより見ているほうがいい」らしきことを言ったようだが、実際は旗艦の変更が面倒くさかっただけの様である(作品内におけるユリアンの推察より)。

尚、OVA版におけるヒューベリオンは、メディアによってその説明が異なる。第13艦隊新設に際して「新たに配備された新型艦」と説明されることもあれば、「退役寸前の旧式艦を(慌てて)引っ張り出してきた」と説明されることもあり、一貫していない。また、別の設定資料では、辺境星域警備艦隊旗艦を、半個艦隊規模ということで、通信設備等を増強した上で艦隊旗艦として配備したというものまである。全長911メートルと、他の同盟軍艦隊旗艦級戦艦(例:パトロクロスは1,159メートル)と比較して小型であるが、通信能力は他の艦隊旗艦級戦艦と比べても遜色がない。

ギャラリー 編集

モデル 編集

ヤン・ウェンリーについては、三国志の人物である諸葛亮がモデルではないかという意見が多い[7]。ただし作者の田中芳樹自身は、ヤンには特定のモデルは存在しないと明言している[8]。また田中の中国歴史小説『奔流』の主人公陳慶之は、天才的戦術を駆使しながら、自らの戦闘技量は極めて低いという点などがヤンと似ていると指摘があるが[9]、田中が陳慶之の存在を知ったのはずっと後の事であるので、当然モデルではあり得ない[10]

なお漫画版のヤンは、作者の道原かつみ自身が、若き日の田中芳樹本人をモデルにしているとコメントしている(ちなみに、OVA版のチュン・ウー・チェンのモデルは「若くなくなった日」の田中芳樹である)。

声優 編集

アニメでヤンの声を担当した声優は3人いる。

  • 富山敬(OVA第一期~第三期及び劇場版アニメ2作)
  • 郷田ほづみ(OVA外伝千億の星・千億の光、螺旋迷宮)
  • 原康義(劇場版黄金の翼)

なお、富山敬が病に倒れたのは、OVA第三期でヤンの死を演じてまもなくであった(第3期最終回でユリアンに話しかけるシーンが富山敬の最後の出番)。

富山の死後、ヤンの死後を描いた第4期(原作第9~10巻)が製作され、回想やユリアンの中で、ヤンが呼び掛けるシーンなど、富山が担当する予定の箇所が存在したが、この時点では代役が見つからず、ナレーションやユリアンのモノローグで処理されている。

プロデューサーの田原正利は自身のwebで、富山が生きていれば第3期以降も出演を依頼した事、また音響処理で富山の声に相当する音声を合成出来る可能性を模索したが、技術的な問題や富山への礼儀上の問題などからこの方法を使用しなかった事を述べている。

参考 編集

お笑いコンビ、ウッチャンナンチャン内村光良は2007年7月14日放送のスマステ内で、香取慎吾に「アニメの実写をやるなら、一番演じてみたいキャラクターは?」と聞かれた際に「誰も知らないと思うけど『銀河英雄伝説』のヤン・ウェンリー」と答えている。

なお、内村はウッチャンウリウリ!ナンチャンナリナリ!!内のコーナーでラインテルトなるキャラクターを演じていたことがある。

脚注 編集

  1. 田中芳樹道原かつみの対談「女性キャラに順位をつけるとしたら」における田中の発言。少年キャプテン1989年8月増刊に掲載。「銀河英雄伝説」読本に再収録。
  2. 作中の設定で東洋式。
  3. 昭和63年の「SFアドベンチャー増刊 銀英伝特集号」の「パーフェクトQ&A銀英伝・田中芳樹のすべてがわかる」コーナーにおいての、作者の田中芳樹の弁による。ただし小説の中国語訳では「楊威利」、「楊文理」、「楊温利」などの字が当てられている。ちなみに、ラインハルトは「萊因哈特」と言う字が当てられる
  4. 憂国騎士団がヤンの自宅を襲撃した際に損壊した壷が「親父の遺品で唯一本物だった」と話している。
  5. 戦史研究科は劣等生コースであることから参加者は極く少数に留まり
  6. 戦術家・戦略家としての能力とチェスの腕前は、現実には別物と言うべきであり、史実においてもナポレオン・ボナパルトはチェスは下手であり、むしろマナーが悪かったと言われる。
  7. 三一書房の「銀河英雄伝説研究序説」において、ネット上でこのような意見が見られると記されている。なお著者自身はこのネット上の意見に肯定も否定もしていない。
  8. 田中芳樹自身は著書『中国武将列伝』において諸葛亮の能力については「歴史上中国を統一した英雄は数多く存在しているが、諸葛亮は統一に失敗した人物である」「能力は司馬懿に劣る」と記して否定的である。
  9. 『「田中芳樹」公式ガイドブック』(講談社文庫)より
  10. なお史実における陳慶之の人物像は、田中の小説と異なり、上述の点以外でヤンと共通する要素は少ない。

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関連項目 編集