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プロフィール
パウル・フォン・オーベルシュタイン
Paul von Oberstein
Paul fon
所属:銀河帝国
声優:塩沢兼人
  

パウル・フォン・オーベルシュタイン(Paul von Oberstein)は、『銀河英雄伝説』の登場人物。

概要 編集

ローエングラム陣営の参謀長的な役割で活躍した軍人。

熱血漢が多いローエングラム陣営主要提督級の登場人物の中で異端的な、感情や倫理、人道より目的達成のための効率・能率を優先させるマキャヴェリズムを体現した冷徹・冷酷なキャラクターである。

その冷徹さから、「ドライアイスの剣」、「正論だけを彫り込んだ永久凍土上の石版」(ヒルダ)、「劇薬」(ロイエンタールもしくはミッターマイヤー)、「帝国印、絶対零度剃刀(かみそり)」(シェーンコップ)の異名を持つ。

読者からの評価は、その感情や倫理といったものを極限まで排した冷徹な言動、冷酷非道といえる多くの作戦・謀略、そして多くのファンを抱えるキルヒアイスを結果的に死に追いやった事から嫌われる事が多い一方、確かな才覚、実績、公平さ、私心の無さ、さらには自分の悪評に対し一切言い訳や自己弁護をしない潔さ、自分の命すら平気で策謀の道具とする覚悟の強さなど、他の悪役・嫌われ者(同盟側ならヨブ・トリューニヒトやトリューニヒト派の政治家、アンドリュー・フォーク。帝国側ならハイドリッヒ・ラングや門閥貴族達)とは一線を画す要素が存在するため(ラングやトリューニヒトはオーベルシュタインのような自己に対する冷徹さはなかった)、彼を高く評価する者もおり、熱心なファンも多い。全登場人物中最も読者からの毀誉褒貶が激しく、評価が大きく割れるキャラクターであるとされている。

略歴 編集

帝国暦452年5月5日生まれ(この誕生日は作者の田中芳樹自身が「オーベルシュタインにもっとも相応しくない日(子供の日)」とし選んだ)[1]。時系列上の初登場は、劇場版アニメ第一作で描かれた第4次ティアマト会戦時にミュッケンベルガー幕僚として報告と意見を述べた時。

容姿は長身痩軀。血色が悪く、年齢の割に白髪が多い。また、先天的障害のため両目とも義眼(この義眼は現代の義眼と異なり、光コンピュータとセンサーを内蔵した視力を回復するものであって、オーベルシュタインは視力を失ってはいない)である。そのコンプレックスも手伝って、劣悪遺伝子排除法を発布したゴールデンバウム王朝を憎み、打倒したいと願っていたが、自分の力だけでは不可能である事を承知しており、その目的を叶える手段と人材を求めていた。大佐の時にはイゼルローン要塞駐留艦隊司令部の幕僚を務めていたが、 同盟第13艦隊によるイゼルローン要塞陥落の際に上官のゼークトの資質を見限って敵前逃亡。その為に処罰される事になったが、門閥貴族との戦いを前にしたラインハルトに自らを売り込み、助命された上でローエングラム陣営に参加し、准将に引き上げられてラインハルトの参謀長兼元帥府事務局長に就任。アムリッツァ星域会戦後に中将に二階級特進し、宇宙艦隊総参謀長に任ぜられ、リップシュタット戦役後にも上級大将に二階級特進、宇宙艦隊総参謀長在任のまま統帥本部総長代理に任ぜられる。

さらにラインハルトの登極とともに帝国元帥、軍務尚書となり、それ以降も様々な政策と策謀を献じ、ローエングラム王朝の影の部分に貢献したとされる。主君ラインハルトが死去した新帝国暦3年7月26日、同じ建物の中で自らを囮におびき寄せた地球教最後の残党の襲撃によって重傷を負い、そのまま息を引き取った。原作小説では39歳没。ただし上記の生年月日が正確である場合、新帝国暦3年は帝国暦492年であり、5月5日は過ぎているので、40歳で死亡した事になる(道原版の設定は小説版完結後の後付けである為、一部整合性を欠いている)。

また、その死は計算づくの殉死とも、完全な誤算ともいわれるが、どちらかかは不明。 フリーライターの山田高明は、著書『銀河英雄伝説研究序説』において、「ラインハルト亡き後の新銀河帝国において、自分が危険因子になると判断して、自らを排除した」と推測している。

能力 編集

謀略、権謀術数といった種類の政略/戦略を本領とした。ラインハルトもその才能を買って、彼を参謀にしている。イゼルローン要塞陥落後に同盟が帝国領に侵攻した時、オーベルシュタインの焦土作戦で同盟軍を瓦解させた。これについて、ヤンは勝つとわかっていてもこんなことは自分にはできないと述べている(ただしヤンはラインハルトの作戦と理解しており、オーベルシュタインの存在はこの時点では知らないと思われる)。

リップシュタット戦役では、捕虜になったオフレッサー上級大将を無事解放しながら彼の部下を全て公開銃殺した。これにより反ラインハルトの急先鋒であったオフレッサーに対して門閥貴族の不信を植え付けて殺害に至らしめ、貴族間の相互不信の引き金とした。そしてオーベルシュタインの策謀の中でも際立って有名な「ヴェスターラント虐殺の黙認」でリップシュタット連合軍に対する民衆の支持を失わせている。

キルヒアイスが殺された時は、リヒテンラーデを首謀者に仕立てて排除するべきと提案した。それを聞いたミッターマイヤーは、嫌悪に満ちた表情で「卿を敵に回したくないものだ。勝てるわけがない」と、痛烈な皮肉を浴びせたが、結局は実行され、これによってラインハルトの権力基盤が確立された。

「バーラトの和約」後にはレンネンカンプを唆してヤンの抹殺を謀り、結果的に同盟の崩壊を導いた。のちに惑星ハイネセンで暴動が発生するとミュラービッテンフェルトを従えて乗り込み、既に駐留していたワーレンと合流して暴動を鎮圧し、旧自由惑星同盟の政府高官・要人らを大量に逮捕(「オーベルシュタインの草刈り」と呼ばれる)するが、その際ハイネセンに潜伏していたルビンスキーの逮捕に成功。全宇宙の医療カルテの中から実在しない患者を割り出す、という気の遠くなるような作業の産物であるが、それをやり遂げたことからも彼の実務能力の高さと、職務への献身ぶりが伺える。

これは帝国軍の内部対立を引き起こしたが、結果的に事態を収拾したラインハルトの好感度が上がる事になった。ユリアンは、それがオーベルシュタインの計算ずくである可能性も考えていた。

ラインハルトにより却下されたものの、帝国軍の有力な将帥を人質としてイゼルローン要塞に派遣し、その犠牲のうえにヤン・ウェンリーを誘殺する、という冷酷な策を提案したが、自らその人質となることも具申しており、自分の命をも道具として使う恐るべき謀略家である事が伺える。

また、メックリンガーが後年記した回顧録によると、軍政に於いても高い見識と能力を備えていたとされる。しかしオーベルシュタインが軍務尚書になったあと、事務が滞る事は皆無であったが、統計上軍務省の職員に胃痛が増えたというエピソードがあり、そのエピソードから、彼の軍政の手腕の質が垣間見える。

その一方で戦場においては、ラインハルトとヤンが直接対戦したバーミリオン星域会戦では有効な助言ができなかった。戦術面においてはその道の天才たるヤンやラインハルトに及ばず、周囲からも「軍官僚や参謀としての能力と比較して、実戦面でのそれは不足している」と評価されている。またラインハルトも、戦術面においてのオーベルシュタインの助言を最初からあてにしていなかった。

ヤンによるイゼルローン攻略戦ではヤンの行動を当てており(ゼークトやシュトックハウゼンがオーベルシュタインの意見を取り入れていれば、ヤンの作戦は失敗した可能性がある)、水準以上の戦術的才能は有している。

人柄 編集

冷静かつ冷徹な策略家。前述通り、その性格を思わせる容姿の持ち主でもある。同僚並びに多くの者が実力・実績を認めるものの、その冷徹さ、マキャヴェリズム的な目的のために手段を問わない手法により人格面では敬遠または忌避されている。その最たるものがヴェスターラント虐殺をラインハルトに黙認させた件であろう。それ故、大半が熱血漢である帝国軍諸将との軋轢を生み、ミッターマイヤーロイエンタール、特にビッテンフェルトとは激しく対立した。また、持論の「ナンバー2不要論」が結果としてキルヒアイスの死とロイエンタール反逆を招き、それがオーベルシュタインへの感情をより悪化させている。フェルナーは、諸将の反感・敵意・憎悪を彼の一身に集中させることでラインハルトの楯となろうとしている故だと推測している。

一方、公人としてほぼ全く私心がないとされ(ビッテンフェルトは「私心がないことを武器にしている」と嫌悪している)、目的の為には自分の命をも犠牲にする案(「回廊の戦い」の後に上申された、志願者を人質としてヤンをおびき出して謀殺する案。志願者がいない場合は自らが人質になる、と手紙に明記)を提案するなど、見方によっては清廉極まる資質を有している。また、ヴェスターラントで家族を殺されたテロリストがラインハルトを弾劾した時に敢えて立ち塞がり、責任の所在とテロの標的は自分だと発言するなど、自らを犠牲にしてラインハルトを擁護しようとする事がある。他にも、アンスバッハによるラインハルト暗殺未遂の際、ラインハルトの前に立ちはだかって庇っている[2]。しかしラインハルト個人に絶対の忠誠を誓っている訳ではなく、ラインハルトは、ラインハルトの存在が王朝の利益と背反する時は、オーベルシュタインはラインハルトを廃立するであろうと述べている。そして実際にも、ラインハルトの崩御が不可避という状況下であるが、そのラインハルト自身を囮として地球教団の実戦部隊を呼び寄せるという策略を実行している。必要とあれば自分の身を投げ出す事にためらいもないが、主君の身についても同様であった。

前述の通り、ルドルフとゴールデンバウム王朝に対しては強い憎悪を抱いており、皇帝フリードリヒ4世崩御の際にその事実を皇帝に対する敬語表現を使わずに発言するなど、感情を表さない彼としては例外的に嫌悪を思わせる思考傾向を見せている。ラインハルトに接近した動機も、その根底にはゴールデンバウム王朝打倒があった。ただしヴェスターラントの虐殺に見られるように、ゴールデンバウム朝的な手法については、それが有効な状況ならばためらわずに使用している。

一方、主君であるラインハルトとの関係は、前述したとおり危機には自らの身をためらいもなくさらして庇う一方、政策に対しては、他の主要な配下たちとは異なりしばしば辛辣なまでにラインハルトの意に沿わない意見を述べ、特に人事に関してはキルヒアイスの重用やヤンの登用、ロイエンタールの高等弁務官就任など、幾度も強硬に反対している。なお、彼がラインハルトの人事案を全面的に賛成して登用された例としてはシュトライトアイゼナッハが挙げられ、いずれもラインハルトの能臣としてその能力を発揮している。他方、自分の部下は、ラングのような才能に対して野心が過多な者を「便利な道具」として重用するなど、その多くを思い通りに動く者で占めさせていた。有能ではあるが決して忠実とは言えず、時には苦言や諫言を呈すフェルナーは、ラインハルトに部下として使うように命令されたのであり、自らの人選ではなかった。しかしそのフェルナーに対しては、ロイエンタール反逆時にミッターマイヤーの心情に対する自身の意見を彼に披瀝する(その際、一瞬ながら苦笑し、「口数が多くなった」と発言している)など、心を開いていたと取れるシーンが散見される。言い換えれば、自ら便利な道具として重用した者に対しては、全く心を開く事が無かった。

ラインハルトの彼に対する感情は微妙である。登用の際に苦言を呈したキルヒアイスに対しては「あの男とはお互いに能力を利用しあうだけだ」と距離を置いて付き合う意志を示したが、自らの意に沿わない発言やしばしば提案される倫理にもとる作戦などに対して強い嫌悪感を抱く一方で、その発言や提案が全くもって「正しい」ために多くの場合は受諾せざるを得ず、後にヒルダに対し「あの男を好いたことなど一度もないが、振り返ってみるとあの男の進言を最も多く採用した」と忌々しげに発言している(現に彼のナンバー2不要論が採用されたかどうか不明だが、ローエングラム王朝においては三長官のナンバー2である宇宙艦隊副司令長官、軍務次官、統帥本部次長の役職は置かれていない)。死の床においてオーベルシュタイン不在の理由が「外せない所用のため」席を外しているという回答(実際はこの時点で既にこの世を去っている)を得たとき、「あの男のすることには常にもっともな理由があるものだ」と皮肉とも納得ともつかない口調で述べており、彼に抱く嫌悪感と信頼の入り混じった複雑な感情を端的に表している。

万事において感情を表す事がなかったが、元帥府前まで自らの後をつけてきたダルマチアン種の老犬を拾って飼うなど(その犬のため、夜な夜な肉屋に行き、鶏肉を買っており、自らの死の直前には老犬だからと自分の死後も鶏肉をやるよう遺言を残した)、人間らしい感情をうかがわせるエピソードもいくつか存在する。

死に瀕して、オーベルシュタインは致命傷を負ったことを悟っており、懸命の治療を施そうとする医師団に対して、助からない者に治療を施すのは労力の無駄だし偽善であると言い放ち亡くなった。最期の最期までドライで万感を排した男であった。

家族 編集

独身。ラーベナルトという名の執事と、ダルマチアン種の老犬と暮らしている。

その他 編集

セガサターン版ゲームでは彼を登用するかどうか選択するイベントが発生するが、この選択によって、その後の展開が大きく左右される。

ギャラリー 編集

脚注 編集

  1. 道原かつみのコミック版より。なお、月刊コミックボックス1990年12月号に掲載されたコメント(銀河英雄伝説読本に再録
  2. アニメ及びコミック版のみの描写

関連項目 編集